小川さん
「音づくり」の指示方法に変更があります。
1.ゆっくりていねいに繰り返す。(口を大きめに使って引き締める)
2.口の動きを浅くしないで、つなげる。
3.ぶん回す。(限度までつなげる)
この指示方法を初心者や中級の生徒に使ってみて、どうもうまくいかないという感触がありました。「1」はほぼこのままで使えるのですが、「2」がうまくいかないのです。「3」はもともとレッスンで扱える方法ではなく、生徒が自分で一人でやる練習に取り入れてもらうものです。レッスンでは上級者以外には使いません。(大森さんには多用しましたが、もともと一人でやる練習用ですから、今はレッスン中には言いません。「家で一人でやる練習でぶん回してください」とは言います。)
これまでの指示方法は、今後は中級後半から上級者用のものとして位置づけます。
最近、「ゆるめない」という指示を使い始めたところ、これが非常に多くの生徒に有効だということがわかりました。大森さんにでさえ、「つなげる」や「ぶん回す」を言わずに、「ゆるめない」と言っています。上級者はもちろんですが、初心者にも使えます。
これまでの「1」「2」「3」のうちの「1」だけを丁寧にやると、初心者用の指示方法ができます。
<初心者用>
1.口を大きめに使って引き締める。速すぎず、遅すぎない速度(自分にとって「普通」の速度)をよく探す。ある程度は最初から「つなげる」。
2.ある程度つなげて、「ゆるめない」で繰り返すと、口の動きがふっと軽くなる時が来る。動きやすくなった口の動きを上手につかまえて「それに乗る」。(サーファーが波をつかまえて波に「乗る」ようにという比喩を常時使いますが、コーチによって別の比喩を思いつけばそれを使っていただいて結構です。)
3.動きやすくなった口の動きを「ゆるめない」で維持する。(波に乗り続ける)
これだけで、ワンランク上の音ができます。
ほとんどの生徒のレッスンで、従来の「口の動きを浅くしないで、つなげる」のうち、「つなげる」をチェックしなくなりました。(上級者用に位置づけました。)
初心者用の「2」にも「3」にも、「ゆるめない」があります。ですので、「ゆるめない」という指示は、常時出します。ゆるんだ瞬間に、すぐに「ゆるめない」と言います。
しかし、この初心者用の指示でも、「2」と「3」はレッスンで行うことではなく、生徒が自分で一人で行うための練習です。「2」と「3」に関しては、生徒に伝え、自分でやるように指示します。
レッスンで使う指示だけを取り出せば、
1.口を大きめに使って引き締める。速すぎず、遅すぎない速度(自分にとって「普通」の速度)をよく探す。ある程度は最初から「つなげる」。
2.ある程度つなげて、「ゆるめない」で繰り返す。
これだけです。
しかし、生徒に伝えるべきことを伝えられるかどうかは、コーチが語学論を内在させているかどうかで決まります。コーチをやる場合に、これが最大の問題です。
従来の指示方法を再度書きます。
<中級後半・上級者用>
1.ゆっくりていねいに繰り返す。(口を大きめに使って引き締める)
2.口の動きを浅くしないで、つなげる。
3.ぶん回す。(限度までつなげる)
ここには、エッセンスがほとんど含まれています。
特に「2」には二律背反が含まれています。
「ゆるめない」ということを文字通りやれば、音は自然につながってきますので、「つなげる」という指示はあまり出さなくなりましたが、「口の動きを浅くしない」という指示は多用しています。これは、初心者用の「音づくり」のプロセスでもしょっちゅう使っています。
つまり、初心者用であろうが上級者用であろうが、日本人の英語の音の練習には、「浅くしない」「ゆるめない」ということは非常に汎用性があるということです。
言葉で書くと、こうも長たらしくなりますが、「つなげる」よりも「ゆるめない」の方がいいと思ったことが指示方法変更の元にあるだけです。